耳元で風が唸る。 小龍の髪が日光を反射しながら銀色に煌めき、広がる。 「帝子」 呼びかけが風に流されることはない。 「できれば名を伺いたい。私は青小龍……龍の子。貴方との運命に結ばれし……即ち宿縁にある者」 飛び込んでくる言葉が頭に焼き付いていく。 小龍。 龍。 宿縁。 帝子。 「……宗優」 「そうですか。では、宗優。貴方にはしばらくお付きあいいただく」 「ちょっと待て」 一方的に話を進めようとする小龍の言葉を遮り、宗優は手を振りほどこうとする。 「お前、何者だ。何故俺を帝子と呼び、何故助ける」 「……私は血の盟約を受け継ぎし者。その血が呼ぶからには貴方は帝子であり、我が盟約の主。命をかけても貴方にこの国の王の座を。それが我が役目……そして殺業の定め。そう、貴方は王となられるお方だ、帝子。その定めを持ち生まれた者は他にもいるはず。だが……貴方が私の前に現れた以上、私は貴方を王座につかせる義務を負う。貴方は知らなければならない……時代が動乱の時を迎えようとしていることを……」 長い長い説明の間、小龍は段々とその高度を下げながら市街の上空を飛んでいた。 息をつき、降り立った先は町外れにの丘に建つ小屋の前。 「どうぞ、中へ」 勧めながら、小龍は小屋の中へと入っていく。 宗優が後に続くと、扉は見計らったように、静かに閉まったのだった。 |