街を駆けていく。 王都の中心に近いこの街は、人に溢れて賑やか。 小龍が見知った裏道へ入ろうとしたとき、誰かが叫んだ。 「このガキがッ……!!」 驚いて、足が止まる。 一瞬のことだった。 右の腕に強い衝撃を受けて、小龍は体勢を崩す。 そちらを見れば、自分と同じくらいの年の少年が慌てて起きあがろうとしているところだった。 「おい、そこの!」 先程叫んだ声が、もっと近いところで聞こえた。 「そいつを捕まえてくれ!!」 そいつ……つまりぶつかってきた少年は、逃げようとする。小龍は迷わず、彼の駆け出す先に片足を伸ばした。 「わわっっ」 転倒する少年の腕を掴んで立たせ、睨み付ける。 「よくやった!」 今度はすぐ近くで、声がした。 「何しやがる、はなせ!!」 少年がもがくのを、小龍は意に介さない。 伏せた目が、本来の茶色から薄く薄く金に近い色へと変化していくのがわかる。 身体が熱い。 髪は、白銀色へと……、 「……ばけものっ!!」 少年が叫び、それはすぐに周囲へと広がる。 「少しお黙りなさい、帝子」 ぎり……、 締め付ける指から伸びる爪が、先程より少し尖っているように、少年には見えた。 「目をつぶって……今すぐに!」 迷う暇もなく……少年は自分の身体が浮いていくのを感じていた。 |