布越しの昼の日差しが、その室内に柔らかな明かりを運んでくる。 ひやりと額を何かが冷やし、飛龍はわずかにまぶたを持ち上げた。 薄く輝く黒瞳がその奥から覗く。 「気がついたか、龍の子」 「……邑摩さん……」 喉に痛みを覚えながら絞り出した声は、少し掠れていた。 飛龍の視線の先には、穏やかな表情を浮かべた男が居る。 彼は昨夜、飛龍をこの部屋までかかえてきた男だ。 邑摩の冷たい指先が、飛龍の額の発熱を抑える。 「……炎の力は強大だが……お前はまだ幼い……」 その言葉に飛龍は目をそらした。 自らが幼いということを、そう認めたくはない。 彼とてもう十五年も生きた。 邑摩にとっては、まだまだ幼くとも。 「飛、制御できぬ力……あまり頼るものではないぞ……」 「……しかし」 身体を起こし、反駁しかけたところに、入口の帳が持ち上がる。 「しかし……、毎度毎度屋敷を破壊されてはたまらぬ」 「……光覇様」 衣擦れの音と共に中へとその身を滑り込ませ、光覇は笑んだ。 「元気そうでなにより……」 瞳と同じように、昨夜から一転して本来の艶のある黒色を取り戻している飛龍の髪へと指を入れる。 「ありがとうございます……」 「礼はいらぬ。が……飛。話がある」 光覇の言葉に飛龍は身体を起こし、彼の前に膝を折った。 それを見て光覇は苦笑し、身を翻す。 「とはいえもう昼時……食をとりながら話すとでもしよう」 |