夢想哲学



神代美奈姫はそもそも学校に行くのがそれほど好きではない。
まあ、救いは、前の席に座っている八坂蛍が、両隣の男子も、あまり話しかけてこない人間だということだろうか。
美奈姫は、自分の世界を作るのが好きだったし、その想像に浸っているときには、あまり他人に構って欲しくなかったのだ。
大概ぼうっとしていて話の細部など聞き逃してしまうし、忘れてしまった想像の世界は、二度と取り戻せないのだ。
それは授業中でも同じこと。
折角想像の世界に入り込もうとしたときに急に指名されたりすると、美奈姫は機嫌が悪くなる。
で、投げ遣りな気分になって、答えられるような質問でも「わかりません」ですませる場合も多々ある。
はっきり言って、みんなそうなんだろうと美奈姫は思う。
でなければ、あんなに「わかりません」が続くこともないものだ。
で、そんなやる気のない生活を送るために学校に行く?
これで学校が好きになれるわけがない。そう思う。
「そんなのより、あんたらと遊んでる方がましでしょ」
あんたら、つまり想像の世界にいる自分の友達に語りかける。小さな声で。
だって本当にそう思うから。
「可愛いよね、あんたたちのほうがさ」
自分の子供達。むしろ分身。
わらってはしゃいで駆けていく、小さな妖精達。
「私っておかしいと思う?」
苦笑して、黒板に向き直った。
複雑な数式が並び、教師がその前で熱弁している。
滑稽な光景だと、たまに思うのだ。
彼の前の生徒達は、一体どれだけ真剣にこの授業を聞いているのだろう、と。
それでも、授業は、つづいていく。



<<<戻る