昼休み終了のチャイムが鳴ったというのに、加瀬良太はやる気なく屋上の扉にもたれ掛かって座っていた。 彼のもたれている扉の、向こう側には、立入禁止の札。 ここの鍵が壊れていることは誰しも承知だが、扉の開け方を知っているものは少ない。 古い扉は、既に少しひずんでいるのだ。 「……ふぁ」 生あくびが出た。 日差しの温かい晴れた日の午後。 今この時間に教室で聞きたくもない授業を、真面目な振りをして、受けている連中が、良太には少し羨ましくもある。 そんな真似は、自分には絶対出来ないからだ。 起きあがって柵の外を見れば、乱立するビルの中、体操服姿の一年生が、運動場を駆け回っている。 サッカーか……、 ああいうのだったらいい。 駆け回って、汗かいて、笑って、いろんなこと発散して。 それだったら。 教室でじっと座っているのは性に合わない。 だけど、あんなのだったら。 思いを巡らせて、コンクリートの屋上を蹴ってみる。 少し笑って、ほんの2・3歩駆けてみる。 そこにボールがあるわけではないけれど。 良太は自分の行動に少し笑って、もう一度座り直した。 屋上の扉にもたれて。 それは、いつもの彼であり、いつもの光景であり。 やはり穏やかな午後は気怠げに過ぎていくのだけれど。 その穏やかな時の中で、ほんの少し笑えればそれで良いと、彼はそう思うのだった。 |