ライバル



「海渡、かーいとっ」
臣屋海渡は、うたたねの邪魔をされたことにかなり不機嫌になったが、とりあえずその相手には笑顔を向けた。
「なに?新一」
佐倉新一と臣屋海渡。
周囲には仲がいいと思われているらしいが、海渡にすればそんなものは否定したいところであり。
まあ、新一もそうなのだろう。
少なくとも本人同士は、馴れ合っているだけのライバルだと思っていたいものだ。
「中間の結果が張り出されてるんだぜ、見に行くぞ」
「……あー……」
そういえば、今日はそんな予定もあった。
テスト結果は新一と見に行く。
それがどうしてか、暗黙の了解になりつつある。
「負けた方がジュースな」
「いいよ、勝つから」
おきまりの会話。
こんなだから、仲がいいと思われるのかも、しれない。
まあどっちみち、300人からいる学年の、100位前後の争いだ。
端から見れば、結構レベルは低い。
人だかりの出来ている掲示板を、海渡は背伸びして何とか見ようとする。
こういうとき、背が低いのが恨めしい。
「み、え、な……」
もっとよく見ようとした海渡は、バランスを崩して後ろに倒れ込んだ。
「……とりあえず……」
その一瞬で見えた、二つの名前。
またいつものように、並んであった、名前。
しりもちをつきながら、海渡は片手を掲げて見せた。



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