そのわけは?



なんでこの世に調理実習なんてものがあるわけ?
そんなことを今更言っても仕方がないのは分かっているけれど。
綾瀬友紀は器用にジャガイモの皮を剥いていきながらもぼやいていた。
料理は得意だ。
でも、得意なのと好きなのとは違う。
ましてや調理実習なんて!!
友紀は、決められた物を決められた材料で私事通りに作るこの時間が大嫌いだった。
料理が得意なのは、好き嫌いが多いから。
自分で作れば、残すことはない
。 が。
「……まったく、嫌になる」
「また始まった……。綾瀬、頼むからちゃんとつくってくれよな」
幼なじみの石守一矢。
彼と同じ班だということも、友紀を苛立たせる原因のひとつ。
「一矢。どうして私が、こんなことしなくちゃいけないわけ?料理は楽しんでするものよ、強制されるもんじゃないの」
「そんなのはどうでもいいんだ。要は、僕達が今日お昼を食べられるかどうかってことで」
そう言って、自分は動かない。
そこそこ料理はできるくせに、だ。
冗談じゃないわよ。
どんなにぼやいても動くのは自分で。
まったくやってられないったら。
「少しは動きなさいよ、一矢!!」
どんっ。
包丁をまな板に叩き付けるようにすると、一矢はようやくだるそうに手伝いだすのだが。
まあそれも、ものの五分もたたないうちに、面倒だなどと言い出されるのはわかっている。
本当に、なんでこの世に調理実習なんてものがあるわけ?
怒り混じりに、友紀はもう一度そうぼやいた。



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